本日はアカウントプランニング特集の2日目。
アメリカでの「GOT MILK?(ミルクはある?)」の事例。
まずはCMをご覧いただけますでしょうか。
若干分かりづらいので
念のため事前にストーリーをご説明します。
少し先の未来を予知できる少年が、
パーティーの席でみんなに
「ケーキを食べちゃだめ!」と叫ぶ。
しかしみんなは無視して食べるのですが、
牛乳がカラであると知って
少年が正しかったことを知るという内容です。
つまりケーキを食べる時は牛乳が不可欠である
ということを遠まわしかつユーモラスに
訴求しています。
このCMは1992年から現在に至るまで
様々なバージョンが制作されている伝説のキャンペーンです。
牛乳が無いと困る状況を描き、
「ミルクはある?」というタグラインで締めます。
以下、秀和システム刊
「広告業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」
より一部抜粋。
1990年代当初、アメリカではミルクの消費量の
落ち込みが激しくなっており、
ミルクの消費量を上げるキャンペーンが実施されました。
過去には、ミルクの良さ、いかに健康に良いかなどを
アピールしてきましたが、あまり効果は見られませんでした。
しかし、ここで消費者の行動を動かすツボを考える
アカウントプランナーは「消費者はミルクが嫌いだとか、
健康にいいことを知らないでミルクを飲まないのではなく、
ミルクを飲みたくなるような場面が減っているから
飲まないのではないか?」という仮設をたてました。
そしてその仮説を立証するために
牛乳が無い状態で生活する人を観察する
「剥奪調査」というユニークな調査手法によって、
ミルクを飲む時というのは、
ミルク単独で飲むことよりも、
何か特定の食べ物を食べている時に
一緒にミルクを飲むことが多いことがわかりました。
逆に言うとミルクを飲みたい時、
近くにないから飲んでいない、
でもそこに潜在需要があるはず、と
アカウントプランナーは考えたのです。
そこで生まれたのが「GOT MILK?」という
広告コピーと、いかにも食べた後にミルクが
欲しくなるような食べ物のビジュアルでした。
消費者は、この広告を見て
「ああ、そうそう。こういう時、
ミルクって欲しくなるよな。
でも最近ミルク買ってないから、
ちょっと買っていこうか!」と
思ってもらえるように仕向けるわけです。
アカウントプランニングは、単なる調査結果や理屈、
はたまた単純な表現のインパクトだけでなく、
しっかりと消費者に共感してもらい、
行動してもらうことに主眼を置いているのです。
この一連の「GOT MILK?」キャンペーンは
アメリカ西海岸にある新進気鋭のクリエイティブエージェンシー
「グッビースルバースタイン&パートナーズ」によるものです。
この会社のアカウントプランナーである
ジョンスティール氏は日本における
アカウントプランニングの代表的な本である
「アカウントプランニングが広告を変える」の著者です。
イギリス人で皮肉屋なので文章もかなり面白いです。
【Jon Steel】
この本によればアカウントプランニングは
以下の背景からアメリカで必要性が問われた
とのことです。
(以下本文より抜粋)
アカウントプランニングが広告プロセスに
もたらした決定的要素は、広告制作プロセスが
「消費者主導型」になったことである。
そもそも広告は人々の消費行動に影響を与えるため、
おそらくこの「消費者主導」という考え方は
さほど画期的に思えないかもしれない。
しかし実際の広告開発の現状は、
消費者をマスと見なすマスマーケティングの
一部分として解釈されてきた。
市場の高度成長期はハードセルで、
時にはイメージ戦略で成功してくることができた。
ところが市場の飽和と消費の鈍化が進む現状では、
マスコミュニケーションの限界が見えてきた。
広告界を悩ます最も大きな問題は、
消費者が見えなくなったことである。
つまり「売れる広告」の核心が見つからないのである。
明日は現在、
世界で最も優れた広告会社と呼ばれる
「クリスピンポーター&ボガスキー」の
アカウントプランニング事例です。
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