CP+B特集、本日は最終日ですので
まとめて3つの事例を取り上げます。
まず1つめはCP+Bが有名になり始めた
1990年代初頭カナダの「モリソンビール」の事例。
この「モリソンビール」の事例も
背景には綿密なアカウントプランニングが
存在しております。
カナダにおける若者のビールの選択動機は、
ビールの「味」や「特長」ではなく、
それを飲んでいる自分が、いかにカッコイイか
というのが真のインサイトでした。
さらに若者はカッコいいアルコール飲料を飲む場合には
無意識にラベルを他人に見えるようにして
自分は「クール」であることをアピールをしている
というインサイトから、
「ラベル」を軸にしてコミュニケーションツールにする
という戦略が導き出されたそうです。
そのためCP+Bは様々なタイプのコピーが
書かれた「ラベル」を複数タイプ制作して
「シール型雑誌広告」や「販促ツール」として
若者たちに配布しました。
このキャンペーンはカナダの若者たちに
ヒットしまくって、モリソンビールは
大人気になったとのことです。
この事例もクライアントが日夜、
一生懸命つくっている「ビールの味」など
「製品間の明確な差異」ではなく、
「ラベル」というデザイン次第でどうとでも転ぶ
「曖昧」な要素およびそれを
他人にアピールする「行為自体」を、
広告コンセプトにしています。
しかしその「スタイル」こそが
若者の真の購入動機であるため、
広告での強調点は「スタイル」だけで良いという
戦略になったと思います。
でも、これがいかに正しい戦略だとしても
実際のビジネスの現場では、この様な提案は
なかなか受け入れられない場合が多いと思います。
もちろんクライアントは、
良い商品作りに日々取り組まれていると思いますが、
だからといって広告で製品特長を強調すべきかというのは
別の話だと思います。
(もちろん、製品特長を強調するのが
ベストソリューションであるケースもありますが)
「製品コンセプト」と「広告コンセプト」は 多くの場合、
別に考えなくてはならないと思いますが、
特に日本の場合は、この2つが「ごちゃまぜ」に
なることが多いです。
稀代の天才ADジョージロイス氏の言葉を借りれば、
アナタ(クライアント)は製品を作ってください。
ボクは広告を作ります。
であると思います。
広告費を支払う側である「クライアント」と
広告費を頂く側である「広告会社」は、
本来は対等な関係であるべきだと思います。
でも多額な広告費をもらっているため、
広告会社は「イエスマン」になりやすく、
どんなに他人の客観的な視点で見て明らかに
正しいと思われる指摘もしないことが多いです。
その結果、クライアントを「褒め潰してしまう」
ケースも多々あります。
クライアントに敬意をしっかりはらったうえで、
丁寧かつ誠実に理路整然と指摘をすることも
時には必要だと思います。
親友のことを真剣に考えたら苦言を言うべきですが、
しかし言わないことの方が多いです。
そもそもクライアントの語源は「患者さん」であり、
広告会社とクライアントの関係は、
お医者さんと患者さんの関係の様な感じであるべきです。
お金をもらっているけど対等な関係を築くべきです。
しかし現実の日本の広告界は「媒体中心」の商取引ですので
対等な関係を築いている広告会社はおそらく少なくて、
もっと言えば「業者的な立ち位置」にいるケースが大半です。
ヒドイ時は「焼きそばパン買って来い」みたいに
「パシリ的」に使われるケースもあります。
クライアントに信頼してもらって対等に
付き合っていけるような
「プロフェッショナリティ」および
企画に伴う対価を頂く「フィー制度」を
確立することが重要である気がします。
2つめの事例は航空会社の
「ヴァージンアトランティック」の事例。
この事例もなかなかクレイジーです。
海外出張には「ヴァージン」というイメージを
強めたいというのが広告目的でしたが、
ターゲットである「頻繁に海外出張をする人」が
最も長い時間接触しているメディアは、
出張時の宿泊先のホテルの「有料アダルト番組」
であることが調査によって明らかになったそうで、
(どんな調査だ?)
よってCP+Bは、海外ポルノの様なトーンで
「ヴァージン」による海外出張の良さを
アピールしたCMを「有料アダルトチャンネル」で
オンエアしたそうです。
つまり[使用メディア:エロチャンネル]だったとのことです。
しかしこのメディアインサイトも正しかったらしく、
ヴァージンは低予算で予想以上の広告効果を上げたようです。
3つめの事例は日本でもおなじみの
洋服チェーン「GAP」のリニューアル告知キャンペーン。
監督は「スパイクジョーンズ氏」です。
このCMは個人的にも大好きなCMですが、
このCM案も、もし私自身がプレゼンするとしたら
どのツラ下げてクライアントにプレゼンしていいかわかりません。
「GAPの店内をメチャメチャに破壊します。」
「最後に自動車がドカーンとGAPに突っ込みます。」
なんてGAPの人たちには言えません。
たぶん日本でこのCM案をクライアントにプレゼンしたら
「永遠に来るな」とか言われそうです。
しかし、広告の送り手であるクライアントの視点ではなく、
広告の受け手であり「真の広告“対象者”」である
若者のインサイトを考えてみると、
このCMはかなり「正しいソリューション」を
提供している様に感じます。
たぶんアメリカでGAPは少しダサイ洋服屋と
思われてる気がしますし、
ファッションカテゴリーにおいて
「クール」に思われるかどうか、という点は
かなり重要な要素だと思います。
そのGAPがクールにリニューアルしたことを
かなり「自虐的」に「破壊的」に描くというのは、
一見非常識なようでいて、
おそらく若者は、この「自慢しなさ加減」に対して
クールに思うでしょうし、
「GAPが変わるんだな」という知覚目標が
しっかり達成されると思います。
逆にこのぐらいインパクトが無いと
現在の情報洪水の中で「あっGAPって変わったんだな」
などと思ってはもらえない気もします。
特に若者に対してはヘタな広告を作ると
「ケッ、広告が何言ってやがんだ」などと
思われるのが関の山です。
私はこのCMたった1本で
かなりGAPがクールに見える様になりました。
大げさかもしれませんが本当です。
何でもかんでも過激な表現が良いとは思いませんが、
このケースにおいては、この表現はアリな気がします。
とはいえクライアント自身が多額の広告費を払っているのに
クライアント自身のプライドが傷つけられる様な
内容のCMを受け入れてもらえるケースは
少ないと思います。
しかし、消費者はみんな大企業はスゴイということを
良くわかっています。
でもスゴイ人が、さらに自慢をしてイイかというのは
別問題です。
人間社会でも謙虚で自虐的な人が人気が出ますし、
イバッた人は敬遠されるように、
広告においてもヘンにいばらず、
謙虚に、時にプライドを抑えて確信犯的に
「自虐的」なくらいにコミュニケーションをする方が、
結果、「大きな好感度」を獲得できることも
あると思います。
ただしこのGAPのCMの様に過度に過激な
表現手法は同時にリスクも伴いますので、
かなり慎重に企画しなければいけないと思いますが。
広告は現実の人付き合いなどの
リアルなコミュニケーションと違って、
「顔が見えない」「不特定多数」の人々に
「顔を合わさず」説得する行為ですので、
おもいっきり自慢した感じになりやすいです。
面と向かったコミュニケーションでは、
相手に自慢しまくると「ドン引き」されるという
反応を如実に目にしますので
自慢している側もおのずと自慢をやめますが、
広告は相手が見えないから「自慢」や「押し付け」
そして「一方的な願望」のオンパレードに
なりやすいです。
調査では、この辺の「ドン引き」具合は
現れにくいと思います。
「ゴミを捨てるな」と書いた途端、
ゴミの数が増えたり、
「未成年は見てはいけない」と言った途端、
莫大な数の未成年が見る(カリギュラ効果)
好きなのにキライと言ったり、
うれしいのに泣いたりする。
この様な「理不尽さ」が人間の特長なのです。
その人間の「理不尽さ」をプランニングに組み込まないと
しかるべき広告効果は出にくいと思います。
「GRP(視聴率の総合計)」に代表される
「広告効率」および「単純接触(催眠術)効果」
偏重な時代は終わっていると思います。
クライアントに成功して頂くことが
広告会社の成功だと思います。
広告において「効率」と「効果」は
数字で把握しやすい「効率」議論に偏りやすいです。
何をもって「広告の効果」かを示すのは
かなり困難ですが、だからといって
「効果」はないがしろにして良い訳ではなく
むしろかなり重要のものだと思います。
CP+Bは、数々の破天荒なキャンペーンを
手がけてきましたし、否定的なことを言われる事も
多いですが、絶大なる「効果」を出し続けてきた
誠実かつクレイジーな広告会社なのだと思います。
CP+Bは最近「ナイキ」のアカウントも
獲得したらしいので、今後も目が離せない会社です。
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