2009年7月13日月曜日

2009年カンヌ⑳「Titanium Lion」

本日は今年のカンヌ「チタニウム部門」で「Titanium Lion」を
受賞した「THE GREAT SCHLEP」の事例。
制作は大統領専用機/エアフォースワンに落書きしたバイラルCMで
有名な「DROGA5」。ちなみにチタニウム部門というのは、
これまでの広告の概念を破壊しつつも
今後の広告界の方向性を示すキャンペーンに与えられる部門です。

チタニウム&インテグレイティッド両部門のグランプリは、
「オバマ大統領」の選挙PRキャンペーンでしたが
この「THE GREAT SCHLEP」の事例もオバマ氏関連。

まず、この事例の前にオバマ陣営がとった戦略・戦術の中で
ユニークなビジュアルアイコンの事例を取り上げさせて頂きます。

全キャンペーンの統合的なアイコンとして以下の様な
「変わるアメリカ」を象徴した「日の出」風デザインを設定。
このアイコンを基本として・・・


アジア団体向けの「蓮(はす)」的なバージョンのアイコンや、


女性団体向けの「♀」的なアイコンや、


子供団体向けの「手書き」風アイコン、


そして環境団体向けの「エコ」系アイコンなど
様々な人々に対する緻密なアプローチをしたそうです。


他のロゴは以下。
↓ClickHere
http://www.barackobama.com/people/

また以前このブログでも取り上げさせて頂いた
アンビエント系アート「OBEY JAIANT」で有名な
「シェパードフェアリー氏」がオバマ氏のアイコンを制作。



【OBEY風オバマ氏】




このアートをネットで購入することで
「個人献金」的な役割になっていたそうです。

ここまでが前置きで、こういった一連の大統領選の中で
非常に重要な役割を果たしたのが「THE GREAT SCHLEP」です。

今回の選挙戦では「フロリダ州」かなりが重要であったそうですが
「フロリダ州」はユダヤ人の高齢者層の影響力がかなり強くて
なおかつ彼らはオバマ氏のことを「モスリム/イスラム教徒」と
みなしていたそうです(実際には違うとのことです)。

一度固まった偏見をコミュニケーションで破壊するのは
かなり困難なので、高齢者層を直接説得するのはあえて避けて
高齢者層に対して「一番影響力が強い層」に焦点を変えました。

それは「孫」です。孫である「ジェネレーションZ」にオバマ氏の
良さを理解してもらうことで祖父祖母を切り崩すという
「間接的コミュニケーション戦略」に打って出たのです。

「将を射ずんば馬から」ということわざがありますが、
直接アプローチしても難しそうな相手に対しては
そのターゲットに影響力の強い別の存在を切り崩すというのは
かなり賢明な戦略だと思います。

実際にはユダヤ人コメディアン「サラ・シルバーマン」を
起用するなどしてYouTubeやtwitterやfacebookという
最先端のメディアを使用することで若年層の心をつかみました。
これらの一連のキャンペーン活動によりオバマ氏は
フロリダ州でも勝利をおさめ大統領にもなりました。



勝因の一つとして考えられるのは
人々を「ひと塊」という大雑把で失礼な捉え方をせずに
「一人ひとりをリスペクトしたこと」である気がします。
これはコミュニケーションの基本原則だと思います。

マスコミュニケーションはとかく大勢に向けた
乱暴で威張った話法の表現になりやすい気がしますが、
本当は「1対1」というつもりでやらないと
コミュニケーションは成立しにくい気がします。

今回のオバマ大統領のキャンペーンは
受け手をリスペクトするという基本原則に則った上で
「先進的グラスツール」を有効に使うことで
成功できたのだと思います。

今年のカンヌはBMWフィルムで有名なデビッドルーバス氏が
審査委員長であることも関係しているかもしれませんが、
「PR旋風」が巻き起きている感じがします。
チタニウム部門やインテグレイティッド部門にも
その傾向は如実に現れている様に感じました。
広告は本当に本格的に形を変化する時期なのだと思います。

最後に頼まれてもないですがたまには会社のために宣伝をします。
私の所属する会社から、何だか絶妙なタイミングで
「オバマ大統領の選挙戦」をテーマにした書籍が
先日出版されました。700日におよぶ選挙戦を
かなり緻密に追われていてアメリカにおける大統領選の
ダイナミズムと、メディアの劇的な変化に柔軟に
対応することで成功を収めたオバマ陣営の動きが
事細かに記された良書です。
監修はkikuikenさんとオガワくんです。

著者の大柴ひさみさんが当社で特別に講演してくださったのですが
その中で「オバマは人々の夢を実現する“乗り物”になった」と
表現されていたことに個人的にはかなり感銘を受けました。
その上であらためて「We can change」というメッセージを
見ると非常に深遠であるように感じました。
興味がある方はぜひお読みください。




ラジオ部門は私の語学力の限界で意図がわかりきれないものが
多かったため申しわけございませんが取り上げておりません。

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