2010年3月15日月曜日

ペプシ・リフレッシュプロジェクト。

本日は3月11日に行われた大柴ひさみさんの講演
「“Conversation is king”時代のマーケティングとは?」
の中で取り上げられていたアメリカのペプシの
社会貢献型マーケティング「Pepsi Refresh Project」に関して。

ペプシは23年間で250億円以上使って出稿し続けてきた
「スーパーボール」のTVCMをやめて、2010年は
「社会貢献アイディア」を一般から募集するという施策を実施。
テーマは以下6カテゴリー。
①健康②アート&文化③食&シェルター④地球⑤地域⑥教育
一般投票およびアドバイザリーボードの審査で選考し、
(大柴さんによるとアメリカ人はVOTE(投票)好きで
投票行為を経ることでフェアに感じる傾向があるとのこと)
毎月1億3千万円、1年間で20億円もの基金を提供するそうです。

【ポスター広告】


【雑誌広告】


【屋外広告】


マーケティングとは「顧客の開発と維持」だという定義がありますが
これまでの広告活動においてはとかく「顧客の開発」つまり
「どれだけ売れたか」だけで効果が問われることがほとんどでしたが
あらゆる業種の産業のシェアが飽和化した現代社会では
顧客の開発よりも「顧客の維持」の方が重要になる気がします。

ご存知の方も多いかと思いますが以下の有名な論文があります。
・新規顧客の獲得には既存顧客を満足させ維持する場合の
 5倍から10倍のコストがかかる。
・平均的な企業は年間に10%から20%の顧客を失っている。
・業種によって差はあるものの顧客離反率を5%低下させれば
 利益は25%から85%増加する。
・顧客一人あたりの利益率は維持された顧客の生涯を通じて
 増加する傾向にある。


平たく言えば、大声で買ってくれという広告をやって刹那的な
お客さんを一時的に呼ぶよりも、しかるべきお客さんと
関係を深めて「生涯顧客」になってもらった方が
よっぽど賢明で誠実でなおかつマーケティングコストもかからない
ということだと思います。

日本の場合はコンビニなどの流通の力が強いため、
流通刺激のために次々と新商品がスクラップ&ビルドされて
長期的なブランドをつくっている余裕が無く、
依然として「顧客の開発」が重視される傾向が強いですが、
(広告表現的に言うと商品名連呼など)
マーケティングを賢明に行おうとするならば、
やはりブランド育成型、生涯顧客醸成型の方が賢いと思います。

また全く別の視点になりますが、ベネトンの一連の衝撃的な
広告のアートディレクターであるオリビエーロ・トスカーニ氏の
著書である「広告は私たちに微笑みかける死体」の中に
世界中の広告スペースの総和はポンピドゥーセンターと
ニューヨーク現代美術館の十万倍の大きさだけど、
このほとんどのスペースで掲出されている広告の大半が人を欺く
楽園のばかげたレトリックで社会にたったく役立つことがない。

といった内容の文章があります。

また私自身が心からリスペクトするバーンバック氏の名言で
以下ようなものがあります。
プロとしてマスメディア使う人間は皆、社会に影響を与えます。
社会を通俗化することもできますし、非道に扱うこともできます。
同時に、より高いレベルに引き上げることもできるのです。


社会貢献型のマーケティングは個人的には
今後のマーケティング活動の方向性の1つの潮流になる可能性も
あると思いますが、ただし社会貢献活動と「実業」との
イメージ連鎖が重要になると思います。

今回のペプシの事例は一番手的なので記憶にも残りやすいですが
競合各社が似た様な施策をやった時の差別化視点で考えると
これまでのペプシのブランドアセットである例えば
「音楽」や「若者」などの要素に特化した社会貢献活動に
フォーカスするなどの視点も必要になる気もします。

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