2007年8月14日火曜日
ビル・バーンバック②フォルクスワーゲン
1959年から始まったフォルクスワーゲンの伝説の
広告キャンペーン。その中で最も有名な広告が
この「Think small.」である。
当時のアメリカ国内においてワーゲンは、
敗戦国であるドイツからの輸入車というイメージが強くあった。
しかも当時はいかにもアメリカ的な大型車が主流だったのに対して、
ワーゲンは「こじんまりとして不恰好な車」ともとられていた。
また当時のアメリカは戦争に勝ってイケイケな状態で、
「大きなものは良いに決まっている」みたいな価値観を
誰もが信じて疑わない時代でもあった。
その中でワーゲンは「小さい車の価値」を通じて、
アメリカの乱暴な思想そのものを批判する広告を実施した。
時流と正反対のことを、しゃあしゃあとやり切ったのである。
しかし当時のアメリカのやり方に疑問をもつ人々は
少なからずとも存在しており、その人たちを中心にワーゲンは
上っ面なイメージよりも実質性のある自動車で、
ワーゲンを選ぶ人は他のアメリカ人とは違う賢い消費者だという、
商品の所有を超えた理想的な人間像イメージの獲得という
高次元のブランディングも成立させていったのである。
「Think small」の次に有名な広告が以下の「Lemon」である。
美しいワーゲンの写真につけられたヘッドラインが
「Lemon:不良品」。
一見、完全に見える製品であったとしても
実はかなりこだわってチェックしていて、
ちょっとしたミスがあってもワーゲンにおいては
「不良品」扱いになるというメッセージである。
当時のアメリカの自動車広告は、勢いづいたデトロイトの
ノリをそのまま引きずった「超いばった広告」かもしくは
にっこり笑ったモデルが前面に出る「虚飾に満ちた広告」が
ほとんどであったが、ワーゲンの広告は
「実体の伴った正直な車」という誠実なイメージを獲得して、
他の自動車広告をあざ笑うかの様にひとり勝ちしていったのである。
ちなみに売り上げ的には1958年のワーゲンの販売台数が
年間7万8千台のだったのに、7年後の1965年には35万台に
(4倍以上)増加している。
ワーゲンはグラフィック広告だけでなくCMも当時からすると
シンプルでアヴァンギャルドなものであった。
このCMのストーリーは、同じく3000ドルを所有する2軒の家を
比較したものである。
左の家のジョーンズさんは、3000ドルでアメリカ的大型車を購入。
右のクレンプラーさんは、3000ドルで新しい冷蔵庫と電子レンジと
食器洗い機と乾燥機とステレオとテレビ2台と「フォルクスワーゲン」を
購入した、という内容。
今流してもクールなCMであると思う。
次のCMも、かなりクールである。
深い雪の中で「除雪車」を運転する人が、除雪車置き場まで
たどりつくのに乗っている自動車が「フォルクスワーゲン」である
というものである。
両CM共に演出がかなりクールであり、当時はCMが始まったのか
どうかも良くわからないで映像に引き込まれていく感じだったらしい。
明日はワーゲンに続くDDBの代表作、
レンタカー「Avis」の事例をお届けします。
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