2008年7月23日水曜日

消費者インサイト③「IKEA・CM①」

「消費者インサイト」特集、3日目の本日は
IKEAのインサイトフルなTVCM事例です。

まずCMを2本ご覧ください。
ちなみにタグラインである「Tidy up.」とは
「片づけよう」という意味です。





このCMではIKEA製品の中でも「収納系」の家具に限定して
「整理しよう」ということを訴求していますが、
「整理しよう」という「ターゲットに“思ってもらいたいこと”」
(パーセプションゴール)をそのまま訴求するのではなく、
「整理せねば」と「ターゲット自身が“自発的に”思ってもらう」ために
「部屋が散らかった状態でヒドイ目にあう」ことで
「整理することの重要性を痛感する」という

プロポジション(訴求点・販売命題)を導き出した上で
それをオモシロ表現で事件にしています。

特に日本の広告では「プロポジション」を導き出さないで
「パーセプションゴール」をそのまま連呼するか
コマソンにするか旬なタレントに言わせるかもしくはオモシロ表現で
置き換えるなどの「プロパガンダ的」に脳内に焼き付ける手法が
とられることが多いですし、その方が手っ取り早くて効果的なことも
多いとは思いますが、しかしこのやり方だとかなりの媒体量が
必要である気がします。

またプロパガンダ的手法は、本当は瞬間的な売上こそ伸ばすけど、
長期的に積み重なる「持続可能な」ブランド要素を
ターゲットの脳内に残すのには不向きな気がします。

上記のIKEAのCM事例における「プロポジション」である
「散らかった状態でヒドイ目にあって初めて整理の必要性を感じる」
という点は、個人的にも共感できる気がします。
私自身も「片づけよう」と思う時って友人から借りたCDを
自分の部屋に放っておいて、踏んづけて割ってしまったなどの
「罰」を受けた状態でないと、なかなか「片づけよう」などとは
思いにくいので、ネガティブ訴求ではありますが広告上では
その「ネガティブな状態を顕在化」させるという手は
アリな気がします。

昨日のIKEAの「店頭」事例の様な「購入に近い場所」と違って、
テレビCMは「購入から遠い場」であるため、
「店頭」でのコミュニケーション話法とは
「異なった話法」が必要であることが多いと思われます。

CMは「限界があるコミュニケーション形態」だと思いますので、
「訴求する内容」は基本的に「1つ」が望ましい気がします。
欲張ってメッセージを詰め込み過ぎてもオーバーローディングに
なって何も伝わらない可能性もある気がします。
「2兎を追う者は1兎も追えず」だと思います。

テレビCMにおける訴求点は店頭の様に「アジテーションが強い内容」
というよりは「購入のきっかけ」や「ブランドの存在意義」を
1点に絞り込んで楽しげに伝える方が効果的である気がします。

IKEAは「店頭」と「CM」の役割をしっかり踏まえて
非常にクレバーに制作物を作り分けている感じがしますし、
ただ単にオモシロおかしい広告が好きなクライアントなのではなく
「広告戦略上」の「道具」として「ユーモア」を巧妙に使い分けて
活用している企業であり、その根底には「店頭」と同様に徹底した
「消費者インサイト」という「他者理解・配慮」の精神が
満ち溢れている気がします。

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