2008年10月14日火曜日

破壊理論/ディスラプション②Apple

ディスラプション特集、2日目の本日は
TBWAグループの代表的なクライアントである
「アップル社」の事例。



アップルの事例は、これまでにこのブログで
何度も取り上げさせて頂いてきましたが、
今回は、エポックメイキングになった3本のCMを
まとめて取り上げさせて頂きます。

まずはアメリカ広告史上「最高のCM」とも言われている
「1984」というCM事例。

このCMはアメフト全米No.1を決める「スーパーボール」の
テレビ中継の時に、たった1回だけオンエアされただけなのに
全米中で話題になった伝説のテレビCMです。

当時コンピューター業界で圧倒的なシェアを誇っていた
「IBM」を全世界のビジネスを支配する「巨人」に例え、
果敢に挑むアップルおよびアップルユーザーの姿を
象徴化したCMです。

【Apple/1984】


このCMは1980年代前半「リークロウ氏」率いる
西海岸のニューウェーブ系クリエイティブブティック
「シャイアットデイ社」が制作(現在はTBWA Chiat/Day)。

同社はアカウントプランニングをアメリカで先駆的に
採用すると同時に、破壊的な広告表現でアメリカに
クリエイティブ革命を起こした会社とされています。

この「1984」は、たった1回の放送だったにも
かかわらず全米でかなり話題になったそうですが、
このCMの放送直後、マッキントッシュを発売した後、
アップルのCEO「スティーブジョブ氏」は
自身がアップル経営陣に迎え入れた元ペプシコーラの社長
「ジョンスカリー氏」らに、アップル社を追い出されてしまいます。
ジョブス氏は自分自身がつくった会社を追い出されてしまうのです。

それに伴って広告のアカウントもシャイアットデイ社から
離れてしまったそうです。

【Steven Paul Jobs】


次のCM事例は、ジョブス氏がアップルを追放された後、
ビルゲイツ率いる「マイクロソフト社」の隆盛により、
アップル社のシェアがどん底になった時、
再びアップルにスティーブジョブス氏が呼び戻された際に、
iMac発売前の反撃の「のろし」的に制作された
「Think different」キャンペーン。

ちなみに以下の映像資料は和訳が無いので先行して
ナレーション原稿を転記いたします。
何回読んでも心に突き刺さる内容だと個人的には思います。

【Apple Computer/Think different】
クレージーな人たちがいる。
反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。
四角い穴に、丸い杭を打ちこむように
物事をまるで違う目で見る人たち。
彼らは規則を嫌う。彼らは現状を肯定しない。
彼らの言葉に心をうたれる人がいる。
反対する人も、賞賛する人も、けなす人もいる。
しかし、彼らを無視することは誰もできない。
なぜなら、彼らは物事を変えたからだ。
彼らは発明した。創造した。人の心をいやし、奮い立たせた。
彼らは人間を前進させた。
彼らは人と違った発想をする。
そうでなければ、何もないキャンパスの上に
芸術作品は見えてくるだろうか?
静寂の中に、今までにない音楽が聞こえてくるだろうか?
私たちは、そんな人たちのために道具を作る。
クレージーと言われる人たちを、私たちは天才と思う。

自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、
本当に世界を変えているのだから。
Think Different


【Apple/Think different】


余談ですが、ジョブス氏がスカリー氏を
ペプシから誘い出した時に言ったとされる名セリフは
このまま一生、砂糖水を売りつづけるのか
それとも世界を変えたいとは思わないのか。、

だそうです。

最後の事例は、言わずと知れたiPodのCM事例です。

【Apple/iPod】


このCMはかなりシンプルだと思いますが、考え抜かれて
削ぎ落とされまくった上でのシンプルという感じがします。

これら3本のCMは、いずれも「破壊理論/ディスラプション」
というプランニングメソッドおよび哲学に基づいて
制作されているようでして、どのCMも同じ業界の「他の広告」とは
「一線を画する」様な、コンセプトおよびアウトプットであると
思います。

広告を誠実に作ろうとすればするほどTBWA社の言う「同質の海」に
紛れ込んでいってしまうことが多い気がします。
正しい広告を作ろうとすればするほど他の広告との「違い」は
無くなって行く傾向にあり、結果差別化が出来ずに受け手に
到達しにくい広告になることが多い気がします。

どんなに正しいことを言っても受け手に到達しないのならば、
意識的にブランドを表現する際に「ある要素」を破壊して
新鮮に見せることをする必要がある、というのが
「ディスラプション」の哲学の一つである気がします。

個人的に「広告はクライアントを越えてはいけない」と思いますが、
アップルは社長であるジョブス自体がクレイジーであり、
ジョブスのビジョンを正確に形にすることがアップルの広告を
他とは違うクレイジーなものにしているのだと思います。

ジョブスが戻ってきた後のアップル社はご存知の様に大躍進を
続けていますが(今後どうなるかはわかりませんが)、
アップルはディスラプションの精神が会社中に行き渡っているから
これだけの成功をしているのだ、と信じたいです。

他とは違うこと、業界内での競争のルールを変えること、
激しい競争の中で勝ち抜いていくには、勇気が必要な気がします。

ちなみにアップル社の「ディスラプションブリーフ」は
以下の様になるそうです。

【Apple/原文そのまま】
Convention:In high technology products,
          communication must revolve
          around product features.
Disruption:”Apple is not about bytes and boxes,
          it is about values.”(Steve Jobs)
Vision    :Apple is the tool for creative minds.

【アップル/超訳】
コンベンション :ハイテク製品の広告は、
         「機能」を中心に展開すべきだ。
ディスラプション:アップルは記憶容量と箱のカタマリではなく
         「価値」だ。(スティーブジョブス氏の発言)
ビジョン     :アップルはクリエイティブマインドな
           人のための道具をつくる。


以下「disrupiton」からの「カット&ペースト」。
アップルの人間的なビジョンは、人間と機械の関係を逆転した。

広告を信用しないけれど、
若者はブランドが好きである。

プロダクトはライフサイクルを持っているが
ブランドは持っていない。

広告とは、決して新しいモノを発明することではなく、
「隠されていたもの」に「光をあてる」ことである。

ソクラテスいわく、あなたは何物も発明していない。
あなたは忘れていたものを「再発見」したのだ。

私たちの仕事は「隠されたもの」を
「表に引っ張り出す」ことである。

数量化できないものは存在しえないという姿勢に
屈してはいけない。

メディアの増殖が進むことにより一つのメディアだけでは
充分な人に充分な時間接触することは出来なくなり、
どのメディアも充分なリーチとフリークエンシーは
提供できないだろう。

広告の累積効果は、幅広く多様なメディアの
「蓄積」のみで得られるだろう。

メディア間の相互依存が増えるのは確実である。

それゆえ広告メッセージは幅広く多様なメディアの中で
「横断的に」伝達可能なものでなければならないだろう。

その上、人々のマインドの中に入り込むためには、
様々なメディアで「統一するに足りるほど」パワフルな
メッセージおよび表現でなければならないだろう。


明日は「アブソリュートウォッカ」の事例です。

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